





「人に影響されやすい性格なので、考えをシンプルにするためにも自分の時間を大切にできる環境に身を置いた方が、より幸せな人生を過ごせると思ったんです。」
そう話すのは、山と川に囲まれた自然豊かな場所に、こだわりの詰まった自宅と庭をつくったSさん。
幼少期から緑に囲まれて過ごしてきたSさんは、就職を機に市街地での暮らしをスタート。
綺麗な夜景を楽しめる眺望のよい部屋で暮らしを楽しむ日々を過ごした。
しかし、せわしなく行き交う車や人の往来を眺めているうちに街での生きづらさを感じ始め、自分が本当に求めているのは「豊かな自然が身近にある環境」だと、改めて気づいたと話してくれた。
現在Sさんの住む自宅があるのは、実家の敷地にある築100年の古民家の跡地。リモートワークなど自宅で過ごす時間も多いSさんにとって、住空間はパフォーマンスを大きく左右する要素でもある。
趣味の旅行などを通して培った感性を活かしながら自身で設計を行い、こだわりを詰め込んだ理想の自宅が完成した。
❛❛朝、目が覚めて寝室から出た時に、窓から差し込む光と緑豊かな美しい景色に包まれながら「今日は素晴らしい一日が始まるんだな」と感じられるような庭を作りたい❜❜
庭作りも自宅と同じくらい熱い思いを持って取り組んだことで、この家は「庭ありき」とも言えるほど満足のいく空間となった。部屋のどこからでも庭を存分に楽しめるよう、壁一面はガラス窓。窓を向いて置かれた大きなソファからも、この空間の主役は庭であることが感じられる。
庭を作ると決めた時、周囲からは管理が大変だからやめておいた方がいいという声も上がった。
「やらなきゃいけないというスタンスで管理をすると嫌になってしまうかもしれないし、不安になってしまうと思う。でも、自分は楽しめる自信があったんです。確かに大変かもしれないけれど、それすらも楽しめるだろうなと思いました。」
「家はリラックスする場所」という考え方を持つ人は多いが、Sさんは「自身の成長の場」でもあると考えている。
自宅の一室に設けたジムでは身体のケアを、庭に設けたサウナではメンタルのケアができるように設計。年に100回以上通うほどのサウナ好きが高じて、自身が一番心地よく「ととのう」ことのできるバレルサウナを導入。当初は目につきにくい場所に設置する予定だったが、庭を感じながら楽しめる場所に変更。 英語の説明書に苦戦しながらも、Sさん自ら組み立てを行った。樽型の美しいデザインと内側からも景色を楽しめるガラス窓、そして、ロウリュでアロマが楽しめるのもポイントだと話してくれた。今も週に1回は必ず入っているそう。
常緑のシラカシは、生垣に採用することで隣家からの視線をカットするという機能的な役割を果たしながら、庭の雑木林感を増すのにも一役買っている。
一方で、季節ごとに異なる表情の庭を楽しむことができるよう、落葉樹も併せて取り入れた。そのうちの1本が、Sさんが自ら植木屋へ足を運んで選んだという「イロハモミジ」。他の木々も、季節ごとに様々な種類の花が咲くよう設計をした。
これまで草木に対しての知識や興味はなかったが、庭づくりを通して植物が身近になったことで、普段何気なく見ていた木にも目が行くようになったという。今までSさんが自ら裏山に入って庭で使えそうな下草の採集に行くこともあるそう。
「これまでは何てことなかったただの雑草も、裏山に入ると『これ庭に植えられる!』と、宝探しをしているような気持ちになります。」庭は、仕事での緊張感をほぐし心を軽くしてくれる存在でもあるというSさん。これから少しずつ木の勉強をしながら、自分の成長と共に庭も育てていきたい、と笑顔で話してくれた。